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gakuto
87 あの友もこの友もみんな死んだ一時腹もたちましたが、母なればこその思いやりが、そうさせたのです。私が娘にその本を読ましたくない心理と同じだと思います。時々私は二重人格的な自分に、正直言ってどうする事が一番正しいのかと迷う時しばしばです。 とにかく子供達は、「平和」な時代をよく認識し、意義深い人間に育ってくれ、よき伴侶に恵まれますようにと唯祈って居ます。未来に夢を広げると無限に楽しいものです。 年老いて、波乱の人生だったが幸福だったと微笑む人間になりたきもの……。 唯犠牲になった学友の姿は生涯忘れることは出来ないでしょう。いや、平和の礎石になった人達を忘れて生きてはいけないのです。『妖光とその尾』より黒石 雅子あの友もこの友もみんな死んだ八田 恵子 広島駅から歩いて十数分の地点、第二総軍司令部があった。私たち二年生のうち十名ばかりが仕事をする場所は天井の低いバラック建てに近い狭い建物であった。西向きに並んだ机の最後部に坐って、配られたばかりの小さなカードに数字を記そうとした矢先である。ピカッーと強烈な光に包まれ、机から二メートルあまりの入口の地面にたたきつけられたかの如く伏している自分に気がついたのは数秒後であったろうか。恐る恐る頭を上げると、眼前には今しがた坐していた建物の屋根がなかば落ち、かろうじて入口の方は口をあけている有様だった。私の横には、その瞬間、前歯が吹き飛んだらしく、口をあけたまま、恐怖のあまり声にならない「中山さん」の姿があった。一瞬のうち