ブックタイトルgakuto
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gakuto
94びとともに伏せをしました。いつも訓練した通り、耳と目を両手でおおい私達も伏せをしました。 しかし、それきりなんにも真っ暗で先生や友達の姿は見えませんでした。気がついて立ち上がった時は、一中のプールの所でした。暑いよ、暑いよドボン、ドボンとプールの中へ飛び込む人がたくさんいました。誰かが「水の中に入ると死ぬぞ、早く逃げなさい。」と男の人が教えてくれました。一生懸命逃げました。私は無我夢中で歩いたり走ったりして比治山橋の所へ出ました。見るとはだしでした。ガラスやくぎも何度ふんだりしたのでしょう。血や泥で自分の足のような気がしませんでした。すると四組の田中和江さんに会いました。「田中さん、まあまあたくさんやけどをして可愛想に」と救急袋のやけどの薬を肩から腕にかけて流してあげました。すると、「まあ、黒河さん、あんたの方が余程ひどいよ、見てごらん。」私は初めて自分の姿を見ました。ブラウスは半分ボロボロになって手首のカフスしか残っていません。もんぺは後ろ側はまるでありませんでした。布のないところは全部火ぶくれで火傷です。 私は思わず焼けどの痛さを知りました。どうしよう早く病院へ行こう、早く帰ってお母さんに見てもらって手当てをしてもらおう。「田中さんは中山という所なので、ずい分遠い所だから早く帰りなさい」と言って、私も火のない所をどことなく逃げました。するとトラックが来て、安全な場所に連れて行くから早く乗るようにと兵隊さんに言われ、見るとまるでおばけのような人ばかり「ウゥウゥ」うなって乗っていらっしゃいました。私は逃げるように宇品の方向へ歩いて行きました。すると途中で、「まあまあはだしで可愛想に。」とわらじを下さってはかして下さいました。少し歩くと火傷をしていたので、はな緒がいたくていたくて片方だけはいて、宇品の兵器廠の防空壕の中でその晩寝ました。 その晩はぐっすり寝たのでしょう。いま思えば別に痛かった覚えもありませんから。ある日、私は家に帰りたい、早く帰って布とんの中でと思い、また足の痛