ブックタイトルgakuto
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gakuto
97 二度とこんな思いは(毎日一機ずつで偵察に来てました)外で「ああ、あそこだ、あそこだ」と子供の声がしたものですから私と一緒に部屋の中に居た末の子洋が西側の縁側へ飛び出るのとピカッと光るのと同時でした。(ピカドンといいますけどドンはきこえませんでした) やられた!!と思い洋をつかんで東側の茶の間まで走った時バラバラと棚の上のものとガラスが落ちて来たので夢中で洋を胸の下へ入れて伏せたのです。物音がおさまり洋の泣き声に我にかえってみたら洋の胸の皮膚は赤むけです。びっくりしてすぐ泣きさけぶ子をおんぶして裸足で近くの姉の家へ走ったのです。ところがどういう事でしょう。姉の家も我家と同様です。これは大変なことだ、しっかりしなければと油をもらって胸のやけどに塗り、泣く子を連れて我家に帰っても手のつけようもなく、ただおろおろと心細く、防空壕へはいったり出たり……。とにかく今晩ねむる処だけは確保しなければとスコップでかべ土やガラスの破片やらガラクタを外へほうり出し、どうにか床にのべられるだけにして泣く子をあやしながら敬子の帰るのを待つより外すべもありません。山を越えたり二重堤防を避難して来る人がみんな死人のように青ぶくれた顔をしてちょうどホールド・アップの時のような格好に手をあげて(手をこげるとやけどがいたいから)申し合わせたように着てるものはボロボロ、それも上半身はほとんど裸で、はだし…… ベトナムの避難民の写真などの比ではありません。全くの地獄絵です。ただもう敬子の安否が気づかわれて……、次々と近所の方達は帰ってみえるのに敬子は日が暮れても帰って来ません。あの時の切ない気持……。 火傷を痛がる洋をつれて電燈もなく真暗な夜!!小さい子はおびえて片時も私からはなれません。仕方なく床の上に横になっていました。十一時頃でしたでしょうか。女学院の先生がお宅の娘さんは東洋工業へ収容されているから迎えに行くようにと連絡して下さいました。泣きさけぶ小さい子を姉に頼んで、どうぞ生きて居てくれるようにと祈りながら牛田の奥から東洋工業まで小さい手押車をおして……。真暗な中に敬子を