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概要

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103 原爆体験記「ピカドン」り、忽然と去って行かれたのではないかとも思う。命ある限り一番逢いたい人だ。又励まし合いながら歩いた西田君のお蔭もあった。 横川橋で三人が別れ、私は家に帰り着くと、家族の者は焼け跡の整理をしていた。父や母の顔を見るとそれまで張り詰めていた気持ちが一度に緩みその場に倒れこんでしまった。それから二週間ばかりは死線を彷徨い、やっと意識が回復した時は絶対に負けるはずがない日本が負け、アメリカやイギリス軍が上陸してくるのだと聞かされ、これから先どうなるのか不安であった。 周囲の様子を見ると、病人を収容している掘っ立て小屋は、横川駅前の電車道で、石畳上に筵を敷きその上に寝かされていた。屋根はトタン板が乗せてあるだけでその下はとても暑い。身体は起き上がることも出来ず、同じように収容されている人々が亡くなっても、他へ移すこともせず、生きている人だけ〔赤チンキ〕を塗ってくれていた。 どういう訳か、蝿が異常に大量発生し死体に卵を産みつけ、それがやがて蛆虫となって群がっていた。八月末までその臨時収容所に居たが、九月になって大八車に乗せられ安芸郡の府中町に移り静養が始まり、次第に元気を取り戻した。 あの日から五十五年が過ぎ二十世紀の終わりを迎えようとしているが、未だ核兵器保有国の間ではギクシャクしておるけれども、これからは核兵器の無い、戦争も無い、命を大切に人間同士仲良くして、真の平和でより豊かな二十一世紀であることを望む。四十九期生