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概要

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108「池に飛び込む」井関 正子 また在学一年生のとき、学徒動員で鶴見橋付近で家屋疎開作業中被爆したが、山内校長の陰で助かったという井関正子さんは、次のように話している。 この日は、朝からギラギラと焼けつくように暑い日だった。私は、大豆かすの朝食をとり、白の長そでのブラウスに、白黒の縦じまのモンペをはき、足はげた履き、肩から防空ずきん、救急袋を、交差にかけたいで立ちで、鶴見橋の集合場所に行った。八時に点呼、一年ひ組は四十六名、鶴見橋から爆心地の方角に、二年生から一列に並び、建物疎開跡かたづけのため、かわらの手渡し作業をすることになっていた。私たちひ組は、一番爆心地寄りだったと思う。並び終わって間もなく空襲の警報が鳴り、白のブラウスの上に、敵機に目立たないように、と紺のセーラー服を着た。十分もたたないうちに、空襲警報が解除になり、ほっと気を緩めて、セーラー服を脱ぎ、空高く金属音をたててB29が飛び去るのを、皆でみとれていた。 セン光……一瞬気絶 その時、隣の友達が「校長先生よ」と肩をつついた。「はっ」として見ると、私の前に、自転車のハンドルを持った校長先生が笑顔で立っておられた。私がかわらを持ち上げようと下を向いた瞬間、セン光が……。私は、気を失っていた。それから、どのくらいの時間がたっただろうか。ふと気がついてみると、黒い雨に襲われ、あたりは一面のヤミで何も見えない。何も聞こえない。 しばらく地面を見つめていると、人の歩く足が見え始めた。私もすぐに立ち上がり、その足の進む方向へついていくうち、だんだんあたりが明るくなり、人影がぼんやり見え始めた。見ると、どの顔も真黒、その顔はふくれあがり、バサバサの髪、ボロボロの服、ま