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gakuto
122 中深川駅に着き、Mさんの案内で暗い夜道を転がるようにつまずきながら歩く。夜も七時を過ぎていたろうか、やっとのことでたどり着く。「よう無事で逃げられたね。大変だったろう」と、温く迎えてくださったご両親の言葉に、長い間緊張していた私たちは安堵と嬉しさで、堰をきったように抱き合って泣き続けた。学徒動員中からこの一年、空襲のない日は一日としてなかったが、まるでウソのようにその晩、私は初めて朝までぐっすり眠ることができた。黒焦げの死体が累々 一夜明けて、「広島市内はまだ危険だし、自分があなたたちの家の様子を確かめてくるから……」とおっしゃったMさんの父上は、朝早く自転車を駆って出掛けて下さった。その間に裏を流れる小川のほとりで、汚れた衣服を洗濯しながらも、家族の安否が気掛かりで、時折り市内の方を見ては手が休んでしまう落ち着かない一日であった。夕暮れにMさんの父上が朗報を持ち帰ってくださった。 私の家では、住居は焼失していたが、家族は全員難を逃れて無事だとのことだった。嬉しくてこみ上げてくる喜びに胸が熱くなったが、もう一人の友人の家族は消息不明とのことで落胆は大きく、私一人だけ喜ぶことはできなかった。静かな郊外のMさんの家で、ご厚意に甘えて二晩もお世話になった私は、すっかり元気を取り戻すと、一時も早く家族の顔が見たくなり、心はもうわが家へ飛んでいて、お礼の言葉もそこそこに足取り軽く市内のわが家へと向かった。中深川から矢賀駅までは列車で行き、そこから市内まで徒歩で行くことになった。 市内に入ると、見渡す限り焼けの原になっているのには驚くばかりであった。広島駅前に立って西の方を見ると、己斐の山々がすぐそこに見える。街の中は、見慣れていた様子と違い、瓦礫と灰の山に変っていて、市内全域が一望の下に見渡せた。遺骨が並んでいるように見える所は、学校か軍隊の跡であったのだろう。道々、黒焦げになった遺体も数しれず、爆心地となった相生橋に近づくにつれて、その数は多くなって