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概要

gakuto

133 爆心地から七百メートルの地点で その内、空が急に曇り、夕立のような黒い雨が降り出し、弟や周りの人たちが黒く染まっていく姿を雨に濡れながら、呆然と見つめていました。我に返って自分の姿を見ると、素足で足の裏は火傷でピリピリと痛み、着ている服はみんなと同じ、まるでボロ布をまとっているようでした。辺りには赤膨れになった死体が散乱していました。 少し移動して鉄道の線路の上に這い上がり市内を見ると、一面まだ炎に包まれていました。みんなと一夜を過ごし、翌朝、救護班の方からもらった一個のおむすびのおいしかったこと、忘れることはできません。その日(七日)の夕方、母とも再会し、お互いに抱き合って無事を喜び合いました。それから一週間の野宿が始まります。死体にはもうウジ虫がわき、火傷をした人はみんな皮膚がぶら下がり、「診療所はどこですか……。水を下さい」とうめきながらさまよい歩いていました。死者は日増しに増え、悪臭が漂い、まるで地獄絵巻を見るように私の眼に焼き付きました。 とりあえず、田舎の親戚(広島県高田郡郷野村)へ身を寄せることになります。幸い私たちは家の中での被爆なので外傷はあまりありませんでしたが、二十日くらい経って、四人とも高熱で倒れてしまいました。伯母は内臓からの出血で下血が続き、苦しみ抜きながら三十二歳の生涯を閉じました。私は高熱で意識のない日が数週間続いたので、伯母の死は隣で寝ていたのに全く知りませんでした。ただ覚えているのは、意識がある時に私に告げた「この状態なら二人とも助からないだろうけど、あの世で会いましょうね。死を恐れないでね……」という言葉でした。いくら「大君の御盾」となって死ぬという思想が、骨の髄までもしみ込んでいた時代とはいえ、残念でたまらなかったことと思います。 私は頭髪が抜け始め、体のあちこちに薄紫の斑点ができ、皮膚が腫れ上がり膿がジクジクと出て、治癒するまでは床に伏したままの状態で、半年の歳月が流れました。ようやく治癒した傷跡は、今もケロイドになって残っています。弟たちは頭髪が抜けてしまいましたが、秋が深まる頃から次第に回復していったそう