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概要

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147 お母ちゃん、顔が見えないは皆の走る方へ一緒に流れ、東練兵場まで逃げた。一夜を溝の中にしゃがんで明かし、翌日、監理部の将校の方に会い、トラックで草津に連れて来て戴いたけれど、相が変っているし、みな驚かれたらしい。やはり、はじめは気も確かだし、子供のことをいって、私を気遣っていたが、次第に様子も悪くなり、ちょうど一策と同じような症状で、十二日には若い清い一生を終った。 久衛は、見なければ見ないで気にかかる。宇部に帰ったのではないかなどいろいろ話す。父は、あの日以来ずっと探しに出ておられた。あの朝「解除になったから行って来ます」と玄関の柱のかげから顔をのぞけて挨拶して出て行ったのが、今でも目前にはっきり浮ぶ。休んでは中学に入れなくなると、一生懸命学校に行ってた子。普通なら夏休みなのに、あの時、一言、休みなさいといえばよかったと、母は愚痴をこぼされる。 一度に三人も奪われて気が抜けたようになり、十五日にはじめて、空けていた家に帰って見たが、何もかもすっかり盗られている。その帰りに終戦を知る。敗戦。一生懸命に頑張って来た子供たち、だが、敗戦を知らずに死んだのが、せめてもの慰めだったのではないかと思った。故渡辺一策・久衛の母