ブックタイトルgakuto
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gakuto
153 熱い、体が焼ける「オバチャン、オカアサン、早く帰りたいの」「帰れるのかの?」「先生、帰らして下さい。母を一目だけでよいですから……」「起こして下さいや、僕はどのくらいの形になっているのかの。もう死ぬるばかりかしら」「おばあちゃんらが、わしが似島におることを知っているのですか」「学校へ行きたいのー」「増村へ行って氷をもらおうや」「増村よ、冷たい氷を頂戴や」「兵隊さん、僕はまだ生きとるのですか」「いつまで行けばよいのかのー?」「舟の後が高いのー、日に当たるといたいのー」「死体が河に流れているのー」「僕は日赤へ行き、宇品から似島というところへ舟で来ました。十三学級の堀弘明です」「オイ、危ない。スコップとバケツを探して下さい」「おばあちゃん、どこにおりますか。早く探して下さい。僕の受持ちです」「僕の本やリュックサック、服に名前が書いてあったかのー」「どこへ行ったかのー、名前を書いてあったの」「ああ、あついあつい、体がやけるで」「早う逃げようや」 爆撃と同時に黒煙に包まれ、所持品を探しても見当たらず、そのまま無一物にて避難したらしい。「藤原先生、今日母が死にましたから、学校を休みますと伝えてください」「骨はどこにある」「おばあちゃんのー」「兵隊さん、永田病院へつれて行って下さい」「頼みます」「僕、死にそうです。どうしたら治るんでしょう。看護婦さん頼みます」「先生、帰らして下さい」「母が骨になっています」「おばあさんの死体をどうした?」