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概要

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3 太田川に消えたも、人を踏まないと行けません。何度呼び合っても、なかなかススムさんのいる場所がわかりません。 地獄のようでした。 身体じゅうが白い包帯のススムさんにやっと会って、水筒の水を飲ませてあげました。息子のぶんを少し残してもろうて。 ススムさんは、日赤で手当てをしてもらってから、戸板で運ばれて、そこへ降ろされたそうです。「肇君とは、ゆうべ、いっしょに電車で寝たんよ。僕は日赤へ行って手当てをしてもらったんじゃ。肇君も日赤におってよね」 と教えてくれました。「ここを動かずに待っとりんさいよ。必ず、いっしょに連れて帰ってあげるけえね」 と何度も何度も念を押して、日赤へたどり着きました。今、お産をしたという人や、死んだ人や、手がちぎれた人や―。 入り口のところに『県工一年生』の印をつけた男の子が、倒れて死んでいました。肇とよく似ているので、我が子かと思ったんですが、顔が違うようです。皆、顔がふくれあがっていて、なかなか見分けがつかないので、念のため、ゲートルをほどいてみました。(ああ、これが息子なら……)と思ったのですが、違うので連れて帰れません。日赤中を呼んで歩いても、肇はおりませんでした。 あきらめて、ススムさんを連れて帰ろうと思って、その場所に後戻りをしたのですが、その場所に、いないんです。あれにはびっくりしました。 どうすることもできず、日が暮れるので、しかたなく歩いて帰りました。ススムさんのお父さんとお母さんに知らせると、飛んで行かれました。でも、おらんかったそうです。 あくる日、そこへ行くと、ススムさんは戸板に乗せられたままで、死んどっちゃったそうです。あの場所で。「ここを動きんさんなよ、動いたら駄目で」といっておいたので、死ぬ前に本人は遺言のつもりで、誰かに頼んだのでしょう。そこへ運んでくれるように。