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概要

gakuto

162下の危険を感じ、近くの防空壕に避難すると、幾人かの友達と一緒になり、お互いの生存を喜び合った。皆んなの顔を見ると、顔半分薄黒くなり、自分の顔も火傷している事に初めて気付く。 この時から二日間、私はこの世の地獄をさまよったと思っている。 防空壕に何分いたかの時間的記憶はないが、同級の小川君、石谷君、私と三人で近くの山に避難する。この日の夕方、中山町の西原君の家に行くまで、三人は同一行動であったが、三十年後に集って話して見ると、目に焼き付いている惨状の記憶は各自で違っているのに気付く。 私の記憶を辿って見たい。 山に掘ってあった防空壕に避難したころから、火傷した顔がヒリヒリと痛みだし、目の前の畑のキュウリを取り、顔を冷やしていると、畑の持ち主に見つかり「種に取ってあるキュウリだ」とひどく叱られた。そこを逃げるようにして広島駅に出る。駅に出て驚いた。電車通りに面した家はみな崩壊している。家に帰るつもりで歩いていると、崩壊している家の下から「お兄さん、助けて」の声がして手を差し伸べている。三人でその手を引っ張る。体は出て来ない。梁が背中の上にある。いくら頑張っても助け出せない。その時、憲兵隊員が近付いて来て、「おい、お前たち早くここから逃げろ」と大声でどなった。三人は助ける事を止め荒神橋方向に歩く。当時、私たちは十三歳。今でもそのことは頭から離れない。 橋まで来てみると、的場町の家並みは猛火に包まれ帰る方向には進めない。逃げ惑う人々が私たちの方に向かって続々と歩いて来る。子供を抱いたり背負っている母親、肩を抱きながら歩いている二人づれ、衣服の引き裂けた人、衣服を着ていない素っ裸の人、そのような人達が限りなく歩いて来る。地獄図と全く同じだ。 描いた人は、何処でその光景を見たのだろうか、想像で描いたのだろうか。私にはその絵と同じものが脳裏に焼き付いている。全身真っ白な女性が近付いて来る。両手を胸の方に上げている。まるで幽霊のような