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概要

gakuto

163 書きながら涙歩き方だ。腕の皮がめくれ、指の先から下に垂れ下がっている。足の皮も足首の所までめくれて、皮を引きずりながら歩いている。皆んな同じ顔だ。唇はめくれ、顔全体が風船のようにふくれている。爆風の高温でなったのであろう。そんな人たちは数週間の内に死んだと聞いている。そんな人々の流れと一緒に中山峠の方に向かって歩いて逃げる。途中、目に二、三十センチある木が突き刺さったまま歩いている女学生に会う。「柱の切れ端が飛んできた」と言う。周囲がこのような状況では、怖いとか、悲惨なとかの感情は全くなかった。 今思い出すと恐ろしい。私自身、両足首に大火傷を負い、火膨れになり、歩行が難しく、友達に助けられながら中山町に住んでいた同級生の西原君の家にたどり着く。同級生も何人か集っていた。時間がたつにつれ、避難して来る人たちが多くなる。石谷君と二人で、何処か他の所に避難しようと西原君の家を出る。道路脇にテントを設置して、罹災証明を発行していたので私たちも貰う。死んでいる子供を背負っていた母親が並んでいる。その子に母親は話しかけていた。これを書きながら涙が出る。忘れたい。 太田川を渡し舟で対岸の安古市の西本君の家に向かう。彼の家に泊めてもらう。広島市内の空は火災で真っ赤な色をしている。西本君のお父さんは、市内に出て帰って来られないので、家中で心配されていたが、後で聞けば亡くなられたとの事、ご迷惑をかけたと思う。 翌朝、仮治療所になっていた古市小学校に行くと、講堂の床いっぱいに負傷者が脚の踏み場もないほど並んで寝ている。苦しくて声を上げている人、水を求める人、死んでいる人。その横に並んで、治療の順番を待ち、足の火膨れを潰して歩けるように手当を受ける。 古市から横川に出て、電車通りを寺町、土橋町と歩き、ここで石谷君と別れ、一人で我が家の焼け跡まで行き、己斐町の家にたどり着き、家族の無事を知った。 一面の焼け野原の中の寺町では焼けただれた電車に