ブックタイトルgakuto
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gakuto
4 学校へ行ったんですが、日直の先生は、「引率の先生がまだ帰って来ないから、わからない」 といわれました。街があんなひどい状態になっているとは思っておられないらしく、私たちが、遠くから尋ねて学校まで来たのに、「帰らにゃあ、わからん」 などといわれました。私は、これは、先生は外の様子を知っておられんからだと思いましたね。それですぐ引き返したんです。頼りにならんかったですよ。 学校、頼っちゃあいけん、私はこの足で息子を探さにゃあいけんと思いました。学校も大変で、分らなかったんでしょうけど。 毎日出て探しましたが、とうとう見つかりませんでした。これはもう川で死んだんだろうと思いました。弁当箱でもと思って、盆前まで探しました。 己斐の山を上がった所のお宮さんに、九十ぐらいのお婆さんがおっちゃったんです。そのお婆さんは死んだ人に会わせてくれるという、不思議な話があったんです。 私はそこへ行きまして、「息子に会わせてください」 と頼んだんです。そうすると、そのお婆さんは、息子とそっくりのいい方で話すんです。「お母さん、川へ入ったら助かるかと思って川へ入ったんよ。そしたら手も足もきかず、プルプルッと沈んだんよ。でも、もういっぺん浮かんだんよ。『天皇陛下万歳』と叫んだんよ。それから沈んでしもうたんだけど。苦しゅうなかったんよ」と。 迷信といわれるかもしれませんが、(ああ、息子はやっぱり、川で死んだんだ)と、思っています。 それで、私の気持ちが落ち着きました。 今日も川へ一番にお参りに行きました。(一九八九年・夏)機械科一年川井 肇さん 話し手 母 川井ヨリコ 聞き手 玉木 瑞枝