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概要

gakuto

167 虐殺の責任を問う虐殺の責任を問う小出  修 ビーンと頭から抑えつけられるような音と同時に物凄い閃光、強烈な青黄色い光が目の前に広がり、東練兵場の草原全てのものが、一瞬目も眩いばかりに明るくなりギラギラと照らし出された。何かにやられたらしいと思った次の瞬間、体が宙に浮き、吹き飛ばされ、叩きつけられたようなショックを受けて気を失った。しばらくして気がついた。自然に手が目と耳をふさいでいた。倒れた体から頭を持ち上げると、目の前の草がゆらゆらと揺らいでいる。それも青黄色いガスの間から揺らいでいる。目が見える、生きている、確かに生きている、そうだ生きているんだ。嬉しかった、生きているのが嬉しかった。 ふと遠くを見るとガスではっきりとは分からないが、ボヤッとした中で人の足が動いている。右の方に皆な逃げているのが見えた。そうだ逃げるんだ。このままいると死ぬか分らん、と起き上がると皆と一緒になって逃げた。逃げた、逃げた。鉄道の機関車の防空壕の中に皆と一緒に逃げた。ここでホッと一息ついた。何が起きたのか、周りの人の顔、顔はドス黒く、埃とガスと火傷のひぶくれで皆な見るに堪えない顔をしている。附近の家を見ると屋根という屋根はみんな傾いて瓦が半分ずり落ちている。埃の中で皆なワーワーと大声を上げて泣いていた。この惨状を今振り返ってみると、十四歳の少年にしては余りにも大きなショックであって、一生の中で最も大きな心の痛手として忘れ得ない出来事であった。 己斐の家に帰ろうと京橋川に架かっている常盤橋を渡ろうとすると、「渡っちゃいかん。ボウボウと向うは燃えとる、危ない」と兵隊さんがおらんでいる。しかたなく橋の下に降りていった。川岸はさいわい引き潮で、川の水は少なかった。見れば対岸はものすごい火勢で燃え上がっていた。大勢の人のウメき声と、叫