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概要

gakuto

179 生きていたんだ生きていたんだ山本 光男 「ああ、爽やかな風、光が眩しい。生きていたんだ」青空がこんなに凄く美しいとは。天皇陛下の玉音放送を聞いて、防空壕から出た。担架に乗ったまま。 あの当時は寄宿舎西寮に入舎していた。五日夜、徹夜で寄宿舎防衛に当り、翌六日朝、夏の暑い日射しの中、睡い目をこすりながら勤労作業に駅裏の東練兵場に向かった。八時過ぎ爆音が聞こえふり仰ぐと、B29一機とその下に落下傘が三つ、紺碧の空に白く浮かんでいるのが見えた。瞬間「ピカッ」と光ると同時に吹き飛ばされ、後は何も解らなくなった。ふと、熱い熱い、背中が燃えている。もうこれは助からないと思った時、目の前に家での父母兄弟との楽しい食事のシーンが浮かんだ。人、まさに死せんとするとき、その人生が走馬灯の様に脳裡に浮ぶと言われている。もうこれまでと覚悟、ふと右手の下にあった級友の足が動いた。「あっ、生きている」、夢中で立ち上がったら真っ暗で何も見えない。 再び屈むと、地上五十センチくらいの範囲は見える。這って少しずつ移動してゆくうちに、霧が晴れるように段々と辺りが見えてきて、皆が機関車の防空壕の所に集って来た。お互いの真っ黒い顔を見合わせて笑い合っていたが、その時、まるで竜が炎を含んだ腹をくねらせながら、猛烈な勢いで紺碧の空に舞い昇る様なキノコ雲を見た。瞬間、異常事態に気付き、指差しながら声も無く呆然として立っていた。頬に触れるとまるで焼いたパンの様に固く、何かぶら下がっているものを千切って捨てた。それは顔の皮膚が剥げて捩れてぶら下がっていたのだ。級友のゲートルの上にあった右掌と手首も火傷して、まるで玉子の様な大きな水疱ができ、左肱も火傷しこっちも触ると固く、真っ黒になって皮膚がぶら下がっていた。また、背中の一部も火傷しており、チリチリ痛むが不思議にも白