ブックタイトルgakuto
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gakuto
204も一生懸命介抱いたしました。ちょうど果物の缶詰を持っておりましたので、皆さんに少しずつ分けてあげましたらとても喜んで下さいました。 このような状況の中でも空襲警報は度々発令され、呻く者、わめく者、まるで此の世の生き地獄でございました。翌日は、主人が交代してくれましたので、その翌日十二日の朝、ご近所でリヤカーをお借りして病院へ迎えに参りました。家へ連れて帰って、姉や妹に逢いましたが、首から顔にかけての火傷がひどくて、目もよく見えなかったのではないかと思います。その日の夕方五時頃「残念だ」と言い残して亡くなりました。 あれからもう二十七年も経ち、草木も生えぬといわれた広島も、見違えるほど立派に復興し、世の中もすっかり変わってしまいましたが、今でも、当時を思い出しますと胸がしめつけられる様な思いがいたします。あのいまわしい原爆投下がなかったら浩二も一人前の父親になっていたかも知れません。こんな悲しい思いを二度と繰り返さぬためにも、全世界に戦争の無い平和が訪れますよう切望して止みません。(昭和四十七年八月「原爆追悼記」より)(当時中学二年 平泉浩二の母)