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gakuto
211 城子の最期ん……」と吾が子の名を連呼して探した。火焔の中に斃れ息も絶え絶えに両親の名を呼んで救いを求める女生徒もあった。又和服に袴をはいた女の先生の傍に同じく他の学校の父兄らしい人が「この辺りの生徒は安田高女の生徒です」と言って立ち去られた。川の中岸辺には生徒が三々五々折り重なって、肌着は破れ髪は乱れて裸となってほとんど絶命の状態で誰とも見分けがつかない。時に午後六時半頃。夕闇はいよいよ迫り冷気は加わり気はいらだつばかり。名を呼び続けて行くうちかすかな声で「ここよ」と叫ぶ吾が子の声と「築山さんはお父さんが来られていいね」とどこからともなく聞こえた友達の叫びが今なお耳底深く残って、誰であったか判然としなかったことが今更ながら残念である。多分仲のよかった友達同志は一緒になってこの川岸まで逃れて来て遂に斃れたのでしょう。城子は川の石に腰掛けていた。朝からこの時刻までどんな気持でわれわれの来るのを待っていたか、よく苦しみをおさえこらえて生きていてくれた。多分他の皆さんも同じ思いであったでしょう。苦しい中からも父母兄弟に救いを求めつつ、これが戦争だ、天皇陛下万歳と絶叫して散った少女の尊い犠牲は永久に忘れられぬ。直ちに川に飛び込んで行き、「城子ちゃんなの」と、たずねる程顔は腫れ目は糸筋の如く頭髪は焼けちぢれ口唇は脹れて見る影も無い容貌に思わず城子ちゃんかと念をおせばかすかにうなずく。モンペに名前を書いた白布がついている。父母に会えた安心か「もう死ぬるよ」と言ってぐったりとなるのを励ましながら身体を抱き上げるとモンペは膝から下はなく、火傷して皮膚がずるっと下がっていた。余り痛みを訴えるのでそっと岸まで運んだとき、一夫人が「お嬢ちゃんが見つかったのですね。私の子供はどうしても見つからないのですよ。一人でも助かって下さい。よろしかったら私の帯で背負って一刻も早くお帰りになっては」と親切に言葉をかけて下さったので帯を戴き辛うじて場所を去ることが出来た。お名前は千田の蔵内さんとおっしゃった。現場を去るに際し声高らかに「帰って先生やお父さんやお母さんに早く救いに来て貰うから暫く元気を出して待っているのですよ」と言い残し