ブックタイトルgakuto

ページ
227/326

このページは gakuto の電子ブックに掲載されている227ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

gakuto

213 城子の最期と体をゆり動かして名を呼び叫んでおられたおばあさんとお母さんがあったが、同校の一年生田村英子さんで同時刻になくなられた。後に偶然にも古田町古江の知人だと分りました。 私達はそれぞれ死体のそばで悲しみと不安のうちに一夜を明かした。前日から食事を摂っていないので空腹を感じていたが、昼頃たき出しがあって大きな握り飯が二つあて配給された。この日も朝から上天気で暑さは一層きびしかった。 死体は一応校庭に運び、誰彼となく一緒に火葬にするようにと私達にもその知らせがあった。とっさの処置とは言え、後で骨が判り難い心配が胸一杯で、出来れば両親の手で火葬にしたいとあれこれ悩んでいたら、幸いにも田村さんの好意により英子さんと一緒に迎えの車で一先ず家に運んでもらうことになった。私達は再び江波避難所に引き返し僅かながら手荷物を纏めて、一緒にいた方々とお別れをして徒歩で観音新開から庚午町に渡り田村家を訪れた。時に三時頃。既に同家においては近隣の方々が集って英子さんと吾が子のために読経を済ませて私達の着くのを待っておられた。 城子は綺麗な布団に寝かせて貰っていた。死んだとは言えこれで身体も楽になったのではないかと思われた。皆さんによって山の焼場に運んでもらったが、古江も多くの死者が出ているので一人ずつ土地を細長く掘って下に薪を積み重ね死体をのせて水に浸した藁を覆って皆さんと一緒に静かに火入れをした。白煙山を縫って天を覆い、ただただ吾が子の安らかな永眠を祈り続けた。 歳月流れて早十三星霜、今年は第十三回忌を迎えるに当たり、当時の見聞を記録して皆様と共に回顧することにいたしました。故築山城子保護者 坂本  潔    坂本 文子