ブックタイトルgakuto

ページ
249/326

このページは gakuto の電子ブックに掲載されている249ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

gakuto

235 あの日 広島の空は青く太陽は夏空にぎらぎらと輝いていました。朝礼の始まる鐘が鳴り、早い人は校庭に出ており、遅い人は二階の教室にまだ残っていました。私は一階の廊下を出口に方に向かっている時、突然右前方から黄金色のような閃光を受け、何だろうと思って光った方に目を向け、続いて青味がかった更に強い光を受けました。「お母ちゃん助けて、先生助けて、」と方々からの泣き叫ぶ声で気がつきましたら、木造校舎の下敷きになっていました。学校に爆弾が落ちてやられたのだと思い、早くここから脱出しなければ火が廻ってきて焼き殺されてしまうと普段の訓練で思いましたが、そこからどのようにして地上に這い上がったのか全く覚えていません。夕方かと思われるような、うす暗い地上に立った時、今まであった建物や木が見えない。不気味な静けさの中で、今、地球上の生物は自分一人ではないかと、瞬時にそういう思いをしたことは今でも忘れることは出来ません。 ふうっと我にかえった時、今度はどなる声、悲鳴をあげる声が一度に耳に入って来ました。あたりを見まわすと校門附近に何人かの人影が見えましたのでその方へ行って見ますと、みんな全身真黒になり、顔や手がずるずるに焼けただれて皮膚がぶらさがり、髪の毛はバサバサで逆立ちをし、衣類は破れてボロボロになっています。両手を前に突き出して、顔では誰彼の判断がつかず、モンペや声で名前を確かめあっていました。私も急いで両手を顔に当ててみました。幸い顔はずるずるにはなっていませんでしたが、大きくはれあがっていました。ユニホームから出ていた右腕は、光線を受けて指先まで皮膚が焼けてずるりとぶらさがっていて、足は裸足だったため、光を受けた右足の外側と左足の内側が手と同じようにずるずるになっていて、破れたユニホームやモンペから恥ずかしいぐらい素肌が見えていました。手に持っていた靴も、髪を横分けにして留めていた一本のピンも肩からかけていた防空頭巾、救急袋も体には何も身につけていませんでした。屋根に遮られて直接光を受けなかった顔と左腕は大きくふくれていました。体が燃えるように熱く喉はヒリヒリして、口の中、鼻の穴は土と埃でざらざ