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概要

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236らして息苦しいようでした。 家事の先生が全身大火傷を受けながらも、「大河小学校へ逃げなさい、比治山方面へ逃げなさい、」と一生懸命に叫んでおられました。そこにいた人達と一緒にぞろぞろと放心したように比治山方面に向かいました。その途中で防火用水の汚れた水を飲んだり体にかけたり、その水の中に浸かっている人もいました。破裂した水道からふき出している水に群がっている人達。「水を飲んだら死ぬぞう、火傷した者は水を飲むな、」と誰かが叫んでいました。 ガレキの上を裸足で逃げていると「手をかしてください、下敷になっている子供を助けてください、」と半狂乱になって叫んでいる母親に出会いました。泣き叫びながら親を探している裸の子供。戦闘帽からはみ出していたところの髪が焼けちぎれ、上半身がずるずるに焼けただれて右往左往していた兵士達。まるで生き地獄でした。 比治山橋まで来た時、毎朝一緒に通学していた隣のクラスの友人と出会いました。私は先生の言われた比治山方面に逃げようと言いましたが、その友人と連れの人は川へ下りて行こうと言います。私は一生懸命に橋を一緒に渡るように誘い、手を引っ張りましたが、とうとう二人連れは川へ下りて行きました。川にはもう大勢の人が浸かっていました。橋を渡りながら川へ下りて行く彼女達の姿を見たのが最後で、それ以後の二人の足取りは今もって判りません。橋を渡った時は何時の間にか一人になっていました。 私は一九四五年四月に、当時国民学校三年生の妹と広島市郊外の祖父母の家に東京から疎開で転校して来たばかりでしたので、広島の地理には不案内でした。先生の言われた大河小学校はどこにあるのか判りませんでしたが、南の方へ向って行きました。余り人影のないうす暗いところで突然、「この方へ来たら危ない、被服廠へ逃げろ、」と男の人にどなられました。その人が指さす方に一人、とぼとぼ行きました。比治山の裏側あたりは、まだ崩れていない家もありました。どこかのおばさんが自分の救急袋から白い油のような物を出して、私の手足の火傷につけながら被服廠を教え