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gakuto
241 母の愛に守られてようです。 顔、背中、両手、両足に大火傷し、川に入ったから紫色にはれ上り、山の中を逃げ廻ったので皮膚は破れてたれ下り、血がにじみ出て、頭の髪は焼けてチリヂリ、ほこりで真白になり一本一本立っているように見え、まるで仁王様のようだったそうです。 私は府中町の父の知人宅の離れに寝かされ、そこで火傷の治療をしました。体の三分の二以上の火傷ですから一升の油を工面しても一日三回ガーゼを取替えるのですから油は十日もありません。広島の町は三日三晩燃え続け一面の焼け野原となり薬もありません。家で寝ている人のためにと医者が巡回して来ましたが寝ている私を見ただけで、「これはひどい、こんなに火傷をしていては助からない、薬がないので助かりそうな人に薬はつけるが死んで行く者につけるのはもったいない」と云って帰って行きました。母はがっかりして「生きているのですから助けてやって下さい」と先生の後を迫ったそうですが先生は「三分の二以上焼けては助からない、あきらめなさい」と云ったそうです。日を替えて又二人の先生が見に来てくれましたが二人の先生も薬がもったいないと云って治療してくれませんでした。杖とも柱とも頼む医者に見離され母は途方にくれたようでした。あの朝私といっしょに家を出た姉は二日たっても三日たっても帰って来ませんでした。父も勤務の合間を見ては収容所を云う収容所をさがして廻りましたが、行方がわかりません。母は火傷をしながらでも帰って来た私を何としても助けてやらなければと必死だったそうです。広島の町は一面の焼野原、お金では薬は手に入らず、母は自分の着物を持って遠くの方まで油を求めに行ったそうです。それでも油が手に入りにくくなり女の子だからと顔だけは、油をぬってくれましたが手や背中は近所で聞いて来ては、じゃが芋を擂ってガーゼにのばして火傷に張りつけていましたが、熱でガーゼがバリバリになり取り替える時が大変でした。ガーゼに張り付いた皮膚や肉までが、ちぎれるようでその痛さは我慢出来るものではありませんでした。熱い蒸タオルを作ってはガーゼの上に乗せ少しでも痛くないように気をつかってく