ブックタイトルgakuto
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gakuto
242れました。キウリも擂って付けましたが、後から水が出て又ずるずるになる。大根も付けて見ましたが赤肌につくとヒリヒリしみる。又じゃが芋にもどりました。防府の陸軍病院から救援隊で広島へこられた隊の中におぢさんの身内の人がおられ、傷人はいないかと尋ねてこられました。病院では衛生兵をしておられるそうでさっそく私に火傷を見てくださり、化膿した所を全部こさげとられ、消毒液を背中に流された時はしみるのに気が遠くなりました。母にいろいろ火傷の治療を教えて下さり軍隊から持って来て下さった油薬をおいて行って下さり、そのお陰で火傷は見る見るよくなって来ました。床の上に坐れる様になると、母にしてもらうのは痛いので自分でガーゼを取っていました。手の皮膚の色が違うのです。私も女の子だったので、顔が気になり、母に顔はどうなっているのか尋ねました。母は『どうもなっていないよ、きれいだよ』と言って私が鏡が見たいと云うと蔵の中だから後で出してもらうからと云って中々持って来てくれません。ある日、目がさめると部屋には誰もおりませんでした。顔のガーゼを取り母屋の洗面所へ鏡を見に行きました。 鏡に写し出された自分の顔を見てびっくりしました。真赤な顔、耳の下からほおにかけて赤黒く盛上った肉、髪はほとんど抜けてなく坊主頭、火傷の跡は皆ケロイドとなりました。その日以来、私は鏡を見たいと云わなくなりました。 夏になれば貧血で倒れ、寒くなればカゼをひきやすく、季節の変り目には火傷の跡がひきつる様に痛みます。頭は一年中、鉛を詰め込まれた様に重く、慢性中耳炎の診断で三度も手術しましたが頭は軽くならず、生きる楽しみもなく病院通いの毎日でした。 乙女から娘へと成長するに從い、私は外出しなくなりました。皮膚の色は梅干しのように赤黒く、その色はなかなか消えません。薬草をせんじて飲めば少しは白くなるかと飲んで見ましたがいっこうに変らず、〝ケロイドが歩く?〝原爆乙女だ?とレッテルをはられ白い目を向けられ火傷をかくすために夏でも長袖を着ていました。