ブックタイトルgakuto

概要

gakuto

254えました。文枝もとても助からぬと決心していたのでしょう。幼き娘にさとされて、私は正座して「取り乱しまして誠にすみません。昨日から色々御世話になりまして有難うございました。と並いる周囲の皆様にご挨拶をいたしました。其の時、軍医さんは文枝に密柑の罐詰を食べさしながら「こんな全身火傷でよく学校へ帰って来ました。兵隊でも本隊迄帰る事はまれな事です。ほんとうに金鵄勲章です。昨夜からお母ちゃん??と求められるので、一刻でも生きながらえさして親子に対面させたいばかりに無理な注射をしていますから早く一言でも多く聞いてやって下さいと仰言いました。すると文枝は「話よりも早くご不浄よ。お母ちゃんの来るのを待っていたのに」との事に又おどろきました。娘故に何事も乱さずガマンしていました。私がとても起されないから、この持って来た浴衣の上へする様に進めても、此処は作法室だから、と云ふて聞き入れません、仕方なく私の胸に背中をだき、両足を曲げる時、とても??死声を出して泣きました、其の時大股部の肉が取れて私の両手にぺっとりはづれてどうにもなりません。看護卒さんが私の手の肉を取って下さいました。文枝の肉は私の手について取られても御不浄の処置をしてもろった事に安心して悪夢にうなされたり、又かすかな眼を開いて「六日の朝波多先生が「今日は大変胸さわぎがしてならないのですが空襲解除になりましたから作業を始めますが、どんな事があっても一糸乱れない行動をとりましょう。では作業開始の号令で、二列になってレンガを運んでいる時、誰かゞＢ29が何か落したよ、と一同空を見上げた瞬間、パット強い光と共に、真暗になって、私が気のついた時には全身の所々に火がついていました。私はうろたえて、中学生に背中の火を消してよ」と頼んでも、皆恐れて逃げて、誰も消して呉れる者もいない。仕方なく地面を三べんくる??まわっても消えないので貯水槽をたずねて飛び込んだら消えたから、先生を尋ねて「先生にだきついたら先生は、解散と仰言いましたので、私は自由行動を取って日赤へ行きました。日赤はもう一杯でどうにもなりませんから共済病院へ帰りました。此処も一杯だから学校に帰って、小使さ