ブックタイトルgakuto
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gakuto
264だから、服を洗ってね。」と云いながら学校へ行き、功ちゃんはとう??帰って来ませんでした。お母さんは、あなたの頼みをしてあげることが出来ませんでした。ごめんなさいね(母) 八月六日、翠町の家から動員を受けていた己斐方面へ探しに行きましたが見つかりません。七日天満橋の根元に功と同じ制服を着た子が横たわっているので、聞いてみると井上君はこの橋を渡って行ったと云うことだった。同じ七日の日、警防団の方が、「息子さんが日赤におられる。」と家に云って来て下さいました。地獄さながらの中を、自転車に張板をのせて、父と長女がつれに行きました。 日赤の前庭のコンクリートの上へ、死体が並べてありました。功は死んでいました。朝は自分の住所と名前を云ったと云うのに。体はふくれて、えび茶色になった膚では、誰が誰だかわかりません。着ているものはボロボロで、その様は何と例えてよいか分からない位悲惨でした。「井上功」と書かれた葉書大の紙が胸の上に置いてあった事と、足の爪が母の爪とそっくりだったことで探しあてることが出来ました。 あの地獄のような中を、警防団の方が家を訪ねて来て下さったので、行方不明にもならなかったのです。どこのどなたかも知らぬまま、御礼申し上げないままに五十年たちました。父も「功、あとからいくからな」とよくひとり言を云っていましたが、昭和二十三年には原爆症で功のもとへ逝きました。中学一年十二才の弟功と、四十七才の父に合掌/(姉)母 井上ヨシエ 明42・3・12生姉 三木 瞳 大15・2・17生二男 井上 功 昭8・1・18生広島市立中学校一年生被爆場所 小網町