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289 生涯で一番長い一日生涯で一番長い一日土井 通哉 「白色に近い閃光が目に映った。黄燐焼夷弾にやられたと瞬間的に考える余裕があった。次の瞬間、物凄い力でぶっ飛ばされた。記憶はここで一時停止した」以上が私が被爆した瞬間の表現である。この中で黄燐焼夷弾と断定しているが、何故だろうか今まで深く考えたことがなかった。図らずも夢の中でその答えらしいものを思い出した。国民学校の防空訓練の様子は、映像等による視聴覚によるものと、バケツリレー等実技によるものであったが、中でも爆弾の種類・目的・効果について映像によって学習した記憶が蘇った。 焼夷弾は大きく分けて黄燐焼夷弾と、油脂焼夷弾の二種類あり、その一つ黄燐焼夷弾の効果は、爆発と同時に広範囲に黄燐を放射して木造家屋を焼失せしめることで、映像では黄色の線条が広範囲に放射されて、まるで、打ち上げ花火が地上爆発したような印象を受けた。黄色と白色の違いはあるが、光線等の形状から、前述の瞬間の表現になったのではないかと、ようやく納得した次第である。余談はさておいて「瞬間」後の状況をストレートに再現する。 記憶の停止した時間は判然としないが、三分から五分くらいではないかと思う。気がついた時、地上は真っ暗がりで一寸先も見えない。そのうえ頭上は何か物体が飛び交い竜巻の様相を呈し、頭を上げることができない。耳をやられたのか音が聞こえない、それでも命は助かった思った。二分か三分くらい腹這いになって様子を窺う。皮ふに触ってみると感触がない、それでもこれしきのこと打撲で負傷したくらいに思っていた。 突然、耳が聴こえるようになったと同時に塵埃が去り視界がひらけてきた。校庭の端っこまで約五十メートルくらい爆風で飛ばされたようである。見渡すと校舎が倒れて燃え始めている。早く避難しなければと身