ブックタイトルgakuto
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gakuto
18なる女の子を背負って路地を歩いていました。ぴかっと光って、ものすごい音がして、そして、後ろから押されるようになりました。爆風だったのです。急いで家に帰りました。「あれを見い。白い煙が上がっているー」 誰かが大きな声でいっています。近所の人たちといっしょに小高い山に登ってみました。広島の方角の空には、太陽の光を受けて、きらきらと銀色に輝きながら、白い煙はむくむくと上がっています。その煙の塊はみるみるうちに大きくなり、きのこの形になって拡がりました。 集まった人たちは方向がわからず、「呉か? 広島じゃろう。ガスタンクか?」 と、口々にいっています。 あの頃は、一部の金持ちの家にしか、電話はありませんでしたからね。すぐには情報は伝わってこず、広島市が大事になっていることは、わかりませんでした。それでも昼前になって、広島に新型爆弾が落とされたといううわさを聞きました。 夕暮れになるにつれ、江田島からも、広島が燃えてそれがどんどん拡がっていく様子が、よくわかりました。夜になってからは、空が真っ赤になって、ますます燃えていることがわかりました。 次の日、七日、学校に行きました。おばさんは行くなといって引きとめたのですが、学校が爆撃を受けたら、ただちに登校しなければいけない規則になっていましたのでね。規則を守らないと、体罰がきびしかったですから。どの舟でもいいから、と切串の港から漁船に乗せてもらいました。舟に乗ると、外は見えません。切串や小用の港には軍艦が停泊していて、傾いて沈みかけたようになっていたのですが、軍の秘密が漏れるというので、舟からは外が見えなくしてあるのです。そして、それらの軍艦は、樹木をかぶせて偽装させてありました。でも、敵は全部知っていたようで、よく宣伝ビラが落ちていました。『木の葉が枯れています。取り替えなさい。もう日本は負けます。降伏しなさい。』 こんな意味のことが書かれていました。