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概要

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19 白い雲 そして真っ赤な空 宇品に着きました。その桟橋で見た情景は、一生忘れられないものです。そこは被災者でいっぱいでした。髪はない。全身火傷の体は赤黒く腫れ上がり、耳は無い。裸で立っている人、横になっている人、人間がどろどろになっていて、男か女か、ぜんぜんわからないんです。こわくなって、人の後について見ないようにして歩きました。 御幸橋にさしかかったとき、着ていた服は焼けて裸になってしまった女の人が両手を上げ、大きな声で何かわめきながら、橋の上を走りまわっていました。 千田町に校舎はあったのですが、鉄骨はグニャーとなって、建物は倒れていました。学校に入ると、先生や生徒が数人来ていました。吉島町にある寮の後片付けをするようにいわれ、先生に引率されて行きました。学校前の南大橋は木の橋でしたが無事でした。そこを渡るとき、老婆が布を体に巻いて死んでいたのが、何故かいまでも忘れられません。橋の下では、引き潮にのって、死んだ人がいっぱい、重なるようになって流れていました。寮はメチャメチャになっていて、とても手を付けられる状態ではなく、「子どもには手におえん。帰れ」 といわれ、引き返しました。そして、通学路(鷹の橋―宝町―柳橋―松原町)と決められていた道を歩こうとしたのですが、町全体が焼け野原なのですから、もう道などはわからず、気がついたら比治山でした。歩きながら見た情景は、とてもいえるものではなく、死体は散乱し、死体を焼く匂いにあふれ、息もしたくないほどでした。 道では、兵隊さんが生きている人と死んでいる人とを分け、生きている人は救護所へ連れていき、死んだ人は集めて、重油をかけて焼いていました。水はあっちこっちの水道管が破れて、流れ出ていました。動けなくなった人たちは、私を見ると、「水、水、みずをくれー」「助けてくれー」「連れて行ってくれ」 といわれるのですが、十三歳の私は、ただ恐ろしくて、何も出来ずじまいで、そのまま通り過ぎたのでし