ブックタイトルgakuto
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57 警報なき空に提げると腕が痛くて歩きにくいし、各々が智恵を出し合い重い木製の机の中に足ごと身体を入れて両腕で持ち上げて道路を歩いた、長い道のりを何度も何度も休んで汗を拭き乍らも運ばされた苦しい記憶がある。戸棚や図書等は殆どトラックで運んでいて、我々の歩いて運ぶそばを何度も通過して行き恨めしく思えた。 二年次に成ってからは、戦況もだんだんと激しさが増し学徒勤労報国隊と服の左胸に氏名を白い布に書いて縫い付け、靴は運動靴は売られて無いので地下足袋を履きゲートルを巻いて戦闘帽をかぶり通学したものである。 春過ぎ頃から基町の兵器廠や各方面への勤労奉仕に駆り出されるようになった、当時の仕事の内で楽しく思い出される事は、暁部隊に行かされた時に、倉庫の中には、砂糖がどんごろすに入って山と積まれ、干しカズノコも袋の中に沢山あって、当時は久しく見たことのない品であったので、勿論ネズミに化けて味をきくことができた。どんごろすの袋は簡単に手が入る穴が開き食べる事ができた。リンゴも倉庫の上の方にあった。そして宇品港へ行って木造船のミカン船に乗り、ミカンを箱に入れて陸揚げする仕事に当たった、形、色やどんな膨らみの尻がおいしいとか担当の人から教えられて、楽しい勤労の喜びを味わった。又、基町の兵器廠に数日間続けて行き、銃剣の錆び取りをする珍しい仕事をした、小皿の油に浸けてあるトクサで磨く作業と倉庫外の雑草を抜く軽作業にも従事させられた。 前年の秋には戸坂町の兵隊に出征されている農家へ手伝いに行き、各七人前後に分かれて稲刈り作業をし昼に貰った弁当のむすびが美味しかったことが懐かしい。特に重労働できつかった仕事は、中山町の奥の山に行かされて横穴を掘る作業で、電車のトンネル大の穴が掘られており、兵隊が徴用工員を使い、その下で我々学徒動員が使われて命令される苛酷な労働であった。壕の中で掘り出された小石や土をモッコに竹を通して、二人連れで肩に担いで外の空き地へ運び出す作業で、喉は乾くし肩に竹が食い込んで痛むし、死ぬ思いとはこの事かと実に地獄のようで苦しい長い一日で