ブックタイトルgakuto
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gakuto
67 警報なき空田町の道路端にはブドウ畑がたくさん並んで植えて有り、トラックの上から眺めても多く成っているのがよく見えた、こんなカンパンよりもと思ったのは贅沢であった。海田に到着して全員降りて、トラックは又、広島方面に向かって行き、暫く待っていると自転車に乗って父が汗を拭きながら帰ってきた。そこから後ろの荷台に乗せてもらい両手でしっかりとつかまって国道を家に向かった。とにかく嬉しかった父は途中で一度も休憩しないで一生懸命にペタルを踏んでくれた。 ようやく、憧れの土地が近付いてきて我が町にはいり、国鉄の踏み切りを渡っていると知らないおばさんが「かわいそうに大怪我をして」と言ってすれ違った。その時、ふと自分の事を言われたのかと気付いた。それまでは自分の怪我はたいしたことはないと思っていたのが、そんなにひどく見えるのかと感じさせられた。帰る途中に小学校が有って正門の前で三人の方が負傷者を中に誘導しており、講堂が救急の救助対策処置所になっていて負傷者や多くの人が集まっていた、床にゴザが敷かれて負傷者は横に寝て治療してもらっており、殆ど大人で学生や生徒の姿は見当たらないので、自分は早く帰った方であろうと思った。自分は下半身は怪我をしていないので椅子に座って治療を受けた。今まで巻いていた包帯は砂ほこりで黒く汚れていたので、切り除いて貰いゲートルも身体からほどいて除けてもらい胸、喉、顔、両手に薬をつけてもらい一応の傷の手当が済み、学校のタンガに寝かされて前を六年の時に学年担任であった城先生に担いで頂き、後ろを父が担いで家まで運んで下さる。初乗りで何と気持ちの良いもので有ると思いながら、やれやれようやく家に帰れたと安心して喜びをかみしめた。 家に着くと母は既に帰っており、顔を軽く火傷した程度で元気な姿を見てほっとした。親戚の者や近所の人達から見舞いや励ましの言葉を掛けてもらい、自分の怪我もひどい方なのかなと感じた、火傷は全部が火膨れとなりビショビショに膨れあがり、方々から膿みが出てその匂いが臭く、自分の身体で有りながら残念で悔しいと憤慨したものである。かさぶたが乾くと痛むのでオキシュウルで拭いて湿らせてもらい蝿がとま