ブックタイトルgakuto
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gakuto
72年生が総動員されていた。 私たちの学校も市内昭和町地区の建物疎開に出動することになっており、八月六日も、学校に集合、朝令の後に現地へ赴くことになっていた。 八月六日。朝から太陽が照りつける猛暑の日であった。私は市内翠町に住んでいた。当日も午前八時の朝令に間に合うよう家を出て、比治山下(現、南区比治山本町)の学校へと急いだ。八時のベルが鳴って、一、二年生四百名余りは朝令のため校庭に集まり整列を始めた。しかし、その日は朝の職員会議が長引いて先生方の姿がなかなか現れなかった。 焼けつくような暑さの中、生徒の列も乱れ始め、校舎の蔭や木陰に移るものも出ていた。私は列の中に留まって校庭の中ほどに立っていた。 その時、誰かが「Bだ!」と叫んだ。空を見上げると頭上はるか超高度で北に向かって飛んでゆくB29の機影が一つ、小さく見えた。「上空に敵機がいるのに何故空襲警報のサイレンが鳴らないのだろうか。そういえば飛行機の爆音も聞こえなかったなあ」とぼんやり思いながら上空を見ていた。その瞬間。 ピカ!一瞬、目もくらむような強烈な閃光が一面に走った。同時にものすごい爆風で体が吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。砂塵を巻き上げて、すぐに真っ暗な世界となる。何秒かたって「ドン!」という大きな爆発音が聞こえた。あとは暫し静寂。何ひとつ見えない暗闇の中で、まるで夢をみているような錯覚に落ち入る。「たぶん至近弾にやられたのだろう。次に直撃弾が落ちてきたら死ぬかも知れない」と真っ暗な中で不安に怯えながら、両手で目と耳を押さえて地面に伏していた。 何分かたった。が、何も起こらない。次第に周囲が騒がしくなってきた。ほんの少し明るさが戻ってきた。ふとみると、自分のズボンの左側が燻っている。あわてて手でもみ消した。 どのくらいたったか、五分?十分?あたりが少し見えてきた。「早く逃げよう!」。薄明りの中を校門の方へ歩いてゆく。さきほどまで、そこに建っていた校舎